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上原 知也*; 小池 美穂*; 中田 英夫*; 花岡 宏史*; 飯田 靖彦*; 橋本 和幸; 秋澤 宏行*; 遠藤 啓吾*; 荒野 泰*
Bioconjugate Chemistry, 18(1), p.190 - 198, 2007/01
被引用回数:20 パーセンタイル:55.17(Biochemical Research Methods)抗体を標識母体とする薬剤は、その緩やかな血液クリアランスのため骨髄障害が広汎な応用を妨げる。標識母体を低分子化抗体(Fab)やペプチドに変換することで骨髄障害は解消されるが、腎臓への放射能滞留による腎障害が問題とされる。本研究では、腎臓刷子縁膜酵素の作用で標識Fabから尿排泄性の放射性代謝物を遊離する放射性レニウム標識薬剤を新規開発し、腎障害の解消を検討した。シクロペンタジエニルトリカルボニルレニウム(CpTR)をRe標識試薬の基本構造に選択し、CpTRにカルボン酸とグリシンを結合したCpTR-Glyの体内動態を検討した。その結果、CpTR-Glyは、マウス血清中で安定であること,血漿蛋白との結合が少ないことを明らかにした。また、CpTR-Glyをマウスに投与したとき、いずれの臓器にも滞留することなく、腎臓から速やかに尿中へと排泄されることを認めた。次に腎臓刷子縁膜酵素の作用でCpTR-GlyをFabから選択的に遊離するアミノ酸配列(マレイミド基)を導入した新規薬剤([Re]CpTR-GK-Fab)を設計・合成し、マウス体内放射能動態を検討した。その結果、[Re]CpTR-GK-Fabは、尿排泄性の放射性代謝物[Re]CpTR-Glyを遊離して、腎臓への放射能集積を投与早期から大きく低減することを認めた。以上より、刷子縁膜酵素を利用した標識薬剤の設計は、金属RI標識低分子化抗体の腎臓への放射能集積の低減に有用であることを明らかにした。
小川 数馬*; 向 高弘*; 荒野 泰*; 小野 正博*; 花岡 宏史*; 石野 誠悟*; 橋本 和幸; 西村 洋*; 佐治 英郎*
Bioconjugate Chemistry, 16(4), p.751 - 757, 2005/07
被引用回数:62 パーセンタイル:86.83(Biochemical Research Methods)患者のQOL(生活の質)の向上を目指した癌性骨転移の疼痛緩和薬剤として、ビスホスホネート化合物の一つであるHEDPに線を放出するReを標識したRe-HEDP化合物が検討されているが、血液クリアランスの遅さや胃への高い集積などが問題となっている。これはおもに、Re-HEDPが多核錯体であり、体内で不安定であるためであると考えられている。そこで、本研究では、二官能性放射性医薬品の概念に基づき、安定なRe単核錯体であるRe-MAG3(メルカプトアセチルトリグリシン)をビスホスホネート骨格を持つ化合物に導入した新規薬剤Re-MAG3-HBPを設計・合成し、その特性を調べた。その結果、MAG3-HBPとRe標識クエン酸の配位子置換反応により、Re-MAG3-HBPを95%以上の放射化学的純度で合成できた。また、本化合物は、リン酸緩衝溶液において、24時間後でも分解は観察されず、Re-HEDPに比べてかなり安定であった。さらに、動物実験の結果、Re-MAG3-HBPは、Re-HEDPに比べて、高い骨への集積,速い血中クリアランス及び低い胃への集積を示し、癌性骨転移の疼痛緩和薬剤として優れた特性を有していることが明らかになった。